リーグワン第15節は4月30日、秩父宮ラグビー場で行われ、トヨタヴェルブリッツは、リコーブラックラムズ東京(BR東京)に、今季最多の10トライを奪って64―17で快勝。勝ち点5を奪い、トップ4争いに踏みとどまった。
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前日降りしきった雨があがり、青く澄みきった空が広がる秩父宮ラグビー場。ビジターゲームで「緑か、黒か」と銘打たれたBR東京相手に「こういうトヨタを待っていた」という80分だった。
前半、風下でのスタートだったトヨタは、自陣からショートパスを多用。ところどころ、FWがコンタクトを入れて相手を巻き込み人数を余らせ、攻撃を継続し続ける。
最初のトライは9分。自陣10m付近、相手キックをキャッチしたWTB岡田優輝がカウンター。CTBマレ・サウがタッチライン際を抜け、サポートしてきたCTBチャーリー・ローレンスに内返しのパス。そのままインゴールに飛び込んだ。パスで相手を崩した意図的なトライだった。
14分、2本目のトライも同様。自陣22m付近での相手キックキャッチからカウンター、辛抱強くボールを繋ぎ、最後はFL吉田杏が3人がかりのタックルを受けながらも、強さで体をインゴールにねじ込ませた。フィジカルの強みを活かしつつ、ボールを継続し続ける。この日は、スクラムはじめセットプレーが安定。理詰めで相手を崩すアタックが随所に見られた。
だが18分、アクシデントが起きる。BR東京SOアイザック・ルーカスがブレイク、相手PRがフォローした場面。ゴールラインまで5mの状況で、NO8姫野和樹共同主将が猛然と戻り、ジャッカル。責任感の強さが表れたプレーだった。ピンチは未然に防いだものの、姫野は足を痛めて退場した。代わりに入ったのはFL佐藤穣司。
試合後の会見で、動揺がなかったか聞かれたSH茂野海人共同主将は「姫野はいつもハードワークしてくれる。いなくなっても動揺はなかった」。サイモン・クロンHCも、「交代で入った佐藤が最高の働きをしてくれた」と語ったが、その言葉通り、この日は佐藤はじめLO秋山大地、吉田杏、古川、岡田ら、中堅どころの選手が献身的に働いた。
前半で4トライを奪い、24-7での折り返し。サイドが変わった後半も、勢いは止まらなかった。後半3分、WTB髙橋汰地のトライを皮切りに6トライ。最終的に今季最多の10トライを奪い、64-17で勝利。プレーヤー・オブ・ザ・マッチは秋山が獲得した。また、今季加入のFBヴィリアメ・ツイドラキが後半15分に交代出場でデビューを果たした。
茂野共同主将は勝因に、前節の静岡BR戦の苦戦をあげた。
「前半なかなか自分たちの思うようにできなかった。今週はスタートから"主導権を奪いに行く"と。そこがうまくいった」
FL古川も言う。
「変わったのはマインドセット。うちは、いいプレーヤー、いい人間が集まっているけど、受けてしまう試合も多かった。入りから、自分たちで獲りにいこうと」
今季、チームは浮上のきっかけをつかめず、もがき続けた。序盤はまずまずの滑り出しも、中盤以降、例年描いていた成長曲線をたどれず。トップ4入りを争うライバルの横浜E、BL東京に黒星を喫した。
きっかけをつかんだ静岡BR戦は、過去7連敗の相手。12点のビハインド、負ければ4強争いから脱落する状況での逆転勝ち(18-15)だった。土俵際まで追い詰められてひっくり返したことで、本来あるべき姿を取り戻せた。
攻守に顔を出し、FLデュトイ不在の穴を埋めて余りある働きをしたオールブラックスキャップ41のLoパトリック・トゥイプロトゥは、快勝の試合こそ、反省を忘れない。
「ディフェンスが切れ切れになった。
キャリーかキックか、もっといい判断ができた場面も。完璧な試合はないが、ディテールをしっかりやっていきたい」
求道者の姿勢は、若手にいい影響をもたらすはずだ。
敗れたBR東京。ピーター・ヒューワットHCは「20名がケガや脳しんとう(による出場停止)でメンバーに選べない」と苦しい台所を明かした。それでも「うちは若い選手が長くプレーできている」と、泣き言にはしなかった。
リーグワンは残すところ、あと1試合。5月7日の東京サントリーサンゴリアス戦だ。前回は第2節で対戦、8-50で敗れている。トヨタにとっては開幕節が中止となり、実質的な初戦。ファーストゲームの固さを突かれた内容だった。今回は中6日、ホストゲームとしてパロマ瑞穂ラグビー場で迎え撃つ。
今シーズンの成長を証明するのに、これ以上ない相手。4強入りを賭けた舞台は整った。
ワークレートは安定。WTB岡田優輝
巧みなパススキルを披露したPR木津悠輔
巧みなキックに加え、ゲインも見せたFBウィリー・ルルー
姫野共同主将退場の穴を埋めたFL佐藤穣司
試合後の円陣には退場した姫野共同主将の姿も
今節も大変多くのご声援をいただきありがとうございました。
次節もよろしくお願いいたします。