最高気温23度。リーグワン第9節交流戦・埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)戦は、3月12日、春を通り越し、初夏を思わせる陽気の中、パロマ瑞穂ラグビー場で行われた。
昨季のトップリーグ王者である埼玉WKとの一戦。後半30分で26-32と僅差。最終スコアは26-51と離されたが、トヨタにとっては収穫も課題もはっきり見えた試合となった。
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NO8姫野和樹共同主将は、会見で「自分たちのメンタリティにチャレンジしようと臨んだ試合」と振り返ったが、ターンオーバーから一気にトライを取り切る相手に対しての対策は練られ、前節までの課題も大きく改善された。
何より、強みであるフィジカルの激しさが戻ってきた。試合開始から前面に押し立てることで、埼玉WKの連続攻撃を寸断。ブレイクダウンも2人目3人目の寄りが早く、相手のターンオーバーを防いだ。
防御も、前節までは簡単にゲインを許す場面も見られたが「幅をワイドに保ち、ラインスピードを上げた」(サイモン・クロンHC)ことで、組織として機能した。
「全員が絶対(相手を)前に出さない気持ちが強く感じられた」(姫野共同主将)
その一端が12分に先制トライを奪われた2分後、WTBウィリアム・トゥポウが見せたプレー。CTBディラン・ライリーがパスを受けた瞬間、狙いすましたタックルを見舞い、仰向けに。相手のペナルティとなり、流れを変えた。
その後、相手陣内で全員で粘り強くフェイズを重ね、CTBロブ・トンプソンが僅かな隙をついて縦へ。ためを作ると走りこんできたNO8姫野にパス。姫野はそのままインゴールへ走りこんだ(トライは18分)。堅固でなる相手ディフェンスを崩した見事なトライだった。
激しいタックルで流れを戻し、粘り強く攻める。前節まで80分間の中で波も見られたが、長い冬を抜けたように、あるべき姿を取り戻した。
前半22分には、SOライオネル・クロニエが自ら蹴ったキックを相手と競り合って再獲得。そのままインゴールへ持ちこんだ。キックを有効に使えていたのもこの試合の特徴だった。
「カウンターとキックは、チームとして準備してきたもの。個人のスキルに頼る面はあるが、今日は両方でいいプレッシャーをかけたことでチャンスが生まれた」とクロニエ。
各局面に修正が施されたことで、チームとして「同じ絵を見られる」状況となっていた。
それは後半も途切れなかった。 終盤の20分にリザーブメンバーを一気に投入して引き離しを図るのが相手のスタイル。18分には19-32と開かれるも、28分にはWTBトゥポウがトライ。クロニエのコンバージョンで26-32まで差を詰めた。
しかし、そこで一段階ギアを上げられるのが昨季王者。31分、CTbライリーがトヨタ防御が上がったところをかわしてトライ。さらに終了間際の2分間で2トライを追加。最終的には26-51のスコアとなった。
試合後、サイモン・クロンHcは「ラスト20分は簡単にトライを許したが、得点だけでは接戦の中身は伝わらない」と、内容を評価。姫野共同主将は「メンタリティで前に出てくれた仲間を誇りに思う」と称えた。
全員が身体を張り、70分まで逆転圏内だったのは収穫。そして最後の2分間で2トライを奪われ、ボーナスポイントを与えたのは今後への反省点だろう。
攻守に気を吐いたWTBトゥポウは「今日の課題はすべて修正できる」とポジティブだった。この日は9歳違いの弟セミシ・トゥポウが埼玉WKの11番で先発。初の兄弟対決となった。
「小さい頃から裏庭でパスをして遊んでいた弟と、いつか一緒に試合をしたいと言っていた。それが日本で実現して、我々の家族にとって特別な日になった」と喜んだ。
後半28分、本人が挙げたトライに最後、ディフェンスに来たのは弟だった。
「負けたのはもちろん悔しいけれど、弟も素晴らしいチームでプレーしていると分かって嬉しい」と兄の顔も見せた。
今週、姫野共同主将は胃腸をこわし、練習にフルで参加できず。だが前半のトライをはじめ、終盤も密集で反則を奪うなど、相手が強いほど力を発揮する本領を発揮。南ア代表FLピーター・ステフデュトイも、80分間あらゆる場所に顔を出し、トップフォームを披露した。
「スティーブ(ハンセン=ディレクターオブラグビー)も来て、チーム全体が明るくなった。これから、もっともっと成長できる」と姫野共同主将。
通算成績は6勝3敗。同じく6勝3敗で、勝ち点で1上回った横浜キヤノンイーグルス(横浜E)が4位に上がり、トヨタは5位に。
次節3月18日は秩父宮ラグビー場で、その横浜Eとの直接対決となる。この試合で生まれた勢いを失わずにチャレンジする。
前半18分、NO8姫野和樹主将が追撃のトライ
2トライを挙げたSOライオネル・クロニエ
スクラムをコントロールしたHO彦坂圭克
後半、試合を締める存在。FL吉田杏
兄・ウィリアムと弟・セミシの直接対決も見られた
試合後、弟セミシをねぎらう兄ウィリアム
今節も大変多くのご声援をいただきありがとうございました。
次節もよろしくお願いいたします。