全員でつかんだリーグワン初勝利。
前週の第3節、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪戦が前日に中止となり、2週間ぶりの公式戦となったトヨタヴェルブリッツ。リーグワン待望の初勝利は苦しんだ末に手に入った。
1月29日の第4節、駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場で対戦したのは東芝ブレイブルーパス東京(以下BL東京)。トップリーグ時代から互いにフィジカルでしのぎを削った好敵手だ。この日も、ブレイクダウンの激しさに手を焼いた。トヨタは最後尾にウィリー・ルルーが初先発。巧みなキックでチームを前に出しアタックでフェイズを重ねるも、BL東京の接点での素早い絡みにボールを失う。序盤はもどかしい展開が続いた。
10分には自陣ゴール前ラインアウトモールからBL東京SH小川高廣共同主将に先制トライを許す。20分にPGを追加され、0-10と追う立場に。流れを変えたのは、14番岡田優輝だった。
29分、相手陣中盤のラインアウトから連続攻撃、SOティアーン・ファルコンからボールをもらうと、空いたスペースに走りこみ、トライを挙げた。横にいたFLピーターステフ・デュトイが囮(おとり)となり、わずかにディフェンスが寄った隙を見逃さなかった。
「 あれはサインプレー。うまくスペースを活かすことができました」
殊勲甲のプレーは、トライだけではなかった。32分にPGを追加され、7-13とされた直後のキックオフ。岡田は猛然と相手にプレッシャーをかけ、ペナルティを勝ち取った。チームはタッチキックを選択。34分、ラインアウトモールからHO加藤竜聖のトライ、SOファルコンの逆転コンバージョン(14-13)へと結び付いた。
「僕は派手なプレーはできないので、泥臭くいくのが仕事」
昨季も全試合に出場した14番が、重苦しい流れを引き戻した。
後半もブレイクダウンで激しい応酬が続き、PG合戦に。11分、20-20の同点の場面でFBルルーが故意のノックオンで一時退場となる。一人少ない時間帯で、今度はFWが意地を見せた。14分、自陣10m付近の相手ボールのスクラム。一気の押しでペナルティを得る。レフリーの笛が吹かれた瞬間、HO加藤が右手の拳を大きく突き上げた。難しい角度のPGをSOファルコンが慎重に決め、23-20と勝ち越した。試合中盤、スクラムで得たペナルティは3点以上の重みがあった。
緊迫したPG合戦に終止符を打ったのは入社3年目、この試合が公式戦初先発の9番福田健太だった。26分、BL東京が攻めていたボールをターンオーバー。自陣22m付近から俊足を活かし独走、一気にゴール前へ。グラウンディング直前に相手が背後からハイタックル、結果的にペナルティトライが与えられた。これで33-23。その後はBL東京の反撃を守り切って勝利を挙げた。
プレイヤー・オブ・ザ・マッチにも選ばれた福田は今季、姫野和樹、茂野海人共同キャプテンが日本代表でチームを空けている間、FL古川聖人とリーダーを任されていた。
「これまでは"自分が自分が"という気持ちが強かったけれど、リーダーとして全体を見るようになって、チームのストラクチャーの中で自分を活かすことを学びました」
強みはスピードとフィットネス。
「サイモン・クロンHCからは"80分でなく、83分走り切れるフィットネスを作れ"と言われて、試合に出られない間も、それはずっとやっていました」
SHに不可欠な負けん気も強い。対面として対戦した小川共同主将は「自分にも、どんどんプレッシャーをかけに来て、チャレンジしてるな、と」。結果的にペナルティトライとなり、トライスコアラーとして名前は記録されないが、存在を鮮烈に印象付けた。
会見でLOパトリック・トゥイプロトゥ、FLデュトイの世界的選手について聞かれたクロンHCは「もちろん二人とも素晴らしい選手だが、今日は全員で勝ち取った勝利」とチームを称えた。福田とHB団を組んだSOファルコンもすべてのキックを成功させた。
全員がきっちり役割を果たし、苦しんだ末につかんだリーグワン初勝利だった。
「今日の反省はペナルティの多さ。細かいところもまだまだ。修正して次の試合を迎えたい」と姫野共同キャプテン。
次節は2月5日、パロマ瑞穂ラグビー場にブラックラムズ東京を迎え撃つ。中止となった開幕の静岡ブルーレヴズ、ドコモ戦は、いずれもトヨタのホストゲームだった。次は待望のファーストジャージーで、2勝目を飾りたい。
前半29分、トライを挙げたWTB岡田優輝
公式戦初先発でマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたSH福田健太
BL東京 LOジェイコブ・ピアスにプレッシャーをかけるFLピーター・ステフデュトイ(左)とLOパトリック・トゥイプロトゥ
試合後は全員で競技場を一周してファンに挨拶
今節も大変多くのご声援をいただきありがとうございました。
次節もよろしくお願いいたします。